NHKのためしてガッテン。虫歯と入れ歯の落とし穴
JR南武線平間駅徒歩1分。ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
NHKのためしてガッテン。虫歯と入れ歯の落とし穴を見ました。
大人を襲う悪性虫歯とは一体なんぞや?と不思議でしたが、歯肉が痩せることによる根面カリエス(歯の根元の象牙質部分の虫歯)の事でした。
また、大人はエナメル質(歯の頭部分を覆う硬い組織)が加齢とともに頑丈になり、虫歯菌の出す酸で溶かされにくくなり、初発の虫歯は出来にくくなります。ただし、二次カリエス(詰め物、かぶせものの隙間から虫歯が再度出来ること)には注意とのこと。
その後の入れ歯の話も、概ね患者さん向けにわかりやすい内容だったと思います。
ただ、根面カリエス、二次カリエスについては「すぐ削って治すべきもの」と受け取られるような表現をしていたのが気になりました。
虫歯をなりかけ~根っこだけ残った状態で段階分けした時、どこから削るかは難しい問題です。
患者さんの置かれた状態、セルフケア、価値観、また先生の方針によって違いはありますが、ワコ歯科の場合
ーお口の中の写真を12枚、表から裏から撮影。(現状の把握)
ーパントモ(お口全体の大きいレントゲン)に加えて、デンタル(歯を1本ずつ詳細に撮影する方法 歯と歯の間、詰め物の境目の虫歯等がわかる)を12枚程度撮影。
ー唾液検査(唾液の量、質、虫歯菌の量を調べる)
ー染め出し(セルフケアでどれだけプラークが取れているかの確認)
ーセルフケア指導(その患者さんにあったセルフケアの道具の紹介と使い方の指導。リスクが高い場合はフッ化物洗口も指示)
ー虫歯、虫歯になりかけがある場合ダイアグノデント(虫歯の度合いをレーザーで測る機械)による検査
等を行い、まず虫歯の出来るリスク、進行するリスクを評価するところから始めています。
虫歯がある場合でも、上記の検査を全て終わらせてからでないと削りません。(痛みがある場合の応急処置は別ですが)
上記の検査、セルフケアの指導を終えた後、虫歯リスクが明確に下がったと判断できないうちは、セルフケアの指導とフッ化物洗口を続けてもらいます。
虫歯も初期であれば唾液中のカルシウムによる再石灰化によって治ったり進行が止まることもありますし、ある程度まで進んだ虫歯も、治りはしないまでもセルフケア、フッ化物応用より進行がすごくゆっくりになることもあります。
写真だけでは番組中に出た虫歯の度合いや、患者さん個々の虫歯リスクがわからないのですが、セルフケアによる進行抑制が可能なこと、虫歯の度合いによっては削らない場合もあるという事はちゃんと触れておいて欲しかったです。
歯は削って人工物に置き換えてしまったら、保険の銀歯、プラスチックであろうが自費のセラミックであろうが、再石灰化は起こらず、詰め物、かぶせものの間の隙間から二次カリエスになるリスクを抱え込むことになります。
痛みが出たり、穴が大きく開いたりしたら削るのもやむなしですが、なるべく進行抑制を行って削る、詰めるを人生の中でなるべく後半にした方が良い、という事もちゃんと説明してほしいと思いました。
あと、個人的な意見ですが、歯ブラシだけでは完璧に歯をきれいにするのは不可能です。歯と歯の間、歯の溝には歯ブラシが届かないからです。
フロス、歯間ブラシ、音波歯ブラシその他患者さんが使いやすいセルフケアグッズ、フッ化物洗口等を患者さん個々のリスクと「受け入れ可能なレベル」に応じて提案すべきでしょう。
歯ブラシだけで虫歯、歯周病が予防できるというのは陰謀ですし、歯科医院での検診とお掃除も、結局普段のセルフケアができていなければ、ちょっと、ねえ。
☆
患者さんが「どこまでなら削る、削らない」という判断をするのは難しいので、自分のお口の中を健康に保ち、削らずに済む(かもしれない)虫歯の状態をチェックしてもらうためには、歯科医院に定期的に行ったほうがいいでしょう。
ステマ乙!
NHKさん!取材お待ちしております!