フェイスボウトランスファーによる、半調節性咬合器の活用事例
JR南武線平間駅徒歩1分。ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
フェイスボウトランスファーによる、半調節性咬合器の活用事例です。
この患者さんは、3年前にセットした右上2(上の真ん中から患者さんから見て右方向に数えて2番目の歯)の遠心(奥側)が一部欠けています。
ジルコニアセラミッククラウンという、人工ダイヤモンド(ジルコニア)のフレームの上にセラミックを盛った、すごく頑丈で精度の高いかぶせものですが、欠けてしまいました。
なぜ欠けたかを調べるために、フェイスボウトランスファー(患者さんの顎関節と上顎歯列の三次元的な位置関係を計測し、咬合器に写し取る作業)を行って、半調節性咬合器(人間のあごの動きにきわめて近い動きを再現できる装置)にマウント(歯形をくっつけること)しました。
すると、下顎の前方運動(下あごを前に動かす)と、側方運動(下あごを横に動かす)時に、右上2の切端(前歯のとんがってるとこ)が、右下3に強くぶつかっていて、それが原因で欠けてしまった(多分)ということがわかりました。
患者さんの下顎の前方運動、側方運動を再現するために、前方チェックバイト、側方チェックバイト(前、横の動きをしたときの噛み合わせの記録)も採得し、半調節性咬合器上で運動路(下顎の動く道筋)を近似的に再現しています。
今のところ、患者さんは「気にならないからこのままでいい」とのことですが、更にかぶせものが欠けたりした場合には、作り直しの時にフェイスボウトランスファーを行い、強くぶつかることの無いように調整したかぶせものを作る予定です。
フェイスボウトランスファーをしなければ、これらの作業は患者さんのお口の中で行わねばなりません。
なるべく作業は模型上で行うことで、チェアタイム(患者さんが椅子に座っている時間)を短くできますし、かぶせものが欠けたり外れたりするリスクを低くすることができます。