歯科における「間違った医療 医学的無益性」を考える(院長 長崎)
JR南武線平間駅徒歩30秒、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
>間違った医療 医学的無益性とは何か(院長 長崎)
今、この本を読んでいます。
医学的無益性:患者に対して回復という利益をもたらすことのない試み
この言葉は初めて聞きました。事例としては「脳死状態となり、回復の見込みがないにも関わらず続けられる延命治療」のような状況を指すようです。
歯科では、直接命にかかわるような治療を行うことはあまり多くありません。
それでも「この治療は本当に患者の利益になるのか?」と考えることはしばしばあります。
他院から来た患者さんで
「虫歯がいっぱいあるから、すぐ削って治療しないといけないと言われた。痛くも痒くもないし、ご飯も美味しく食べられているのに、虫歯だと言われて困惑している」
「保険の銀歯だとすぐダメになるから、自費のセラミックを強く勧められた。数十万円もかかるそうだが、本当にセラミックでないとダメなのか相談したい」
というような事例です。(毎月2~3人は来ます)
虫歯はその人のセルフケア(フッ素入り歯磨き、フッ素うがい等)や生活習慣の積み重ねで進行します。つまり、虫歯であってもセルフケアや生活習慣を改善すれば止まる(かもしれない)のです。
今現在痛み等の症状がなければ、必ずしもすぐ削る必要はないのです。
また、銀歯だとすぐダメになる。自費のセラミックなら長持ちするというのも、実ははっきりしたエビデンスはありません。
個人的には、詰め物の寿命を決めるのは虫歯の発生、進行抑制と同じくセルフケアや生活習慣の積み重ねだと思っています。
自費のセラミックを勧める前に、まず患者自身のセルフケアや生活習慣の見直しや改善の指導を行うべきではないでしょうか。
この本を読みながら、歯科における医学的無益性は何か。歯科において「患者の利益」とは何かを考えています。
歯科における患者の利益は
「痛くなく、美味しくご飯が食べられる」
ことでしょう。
(人によっては、見栄えをよくすることもあるかもしれませんが、ここは一旦横においておきます)
虫歯を削ったり、自費のセラミックを入れる事はその「手段」であって「目的」そのものではありません。
また、そもそもセルフケアや生活習慣になんらかの問題があるから虫歯になったのに、その原因を改善しないまま「虫歯だからといきなり削る」「長持ちするからと自費のセラミックを入れる」だけでは、同じ原因で必ずまた虫歯になります。
ただ、上記のような「まったく困ってないのに虫歯をすぐ削らないとダメと言われた」「銀歯はすぐダメになるから自費のセラミックを強く勧められた」患者の99%は、セルフケアや生活習慣の確認や改善の指導を全く受けていません。
この事をどう考えればいいのか…