医療現場の行動経済学を読んで(院長 長崎)
医療現場の行動経済学を読んで(院長 長崎)
JR南武線平間駅徒歩30秒、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
医療現場の行動経済学 患者に『エビデンスに基づいた正しい(と思われる)選択をさせるにはどうすればいいのか?』という本
すごく面白く読めたが、その一方で「正しい(と思われる)選択」があるなら、それだけ提示して「貴方の愚行権も認めます」と言ってあげた方がわかりやすいのでは?
医療者側が『エビデンスに基づいた正しい(と思われる)選択』と、それ以外の無数の選択肢をあたかも並列の選択のように言うから、患者は混乱してしまうのではないのか? そうなると、(現在の価値観ではあまり良くないとされている)パターナリズムになってしまうが…
ネットの情報に溺れて「選択肢が多すぎて選べない」状態になっている患者さんを見ると 「人によっては、パターナリズムもありなのではないか?」 と思えてくる。
私は患者さんに治療法(或いは進行抑制)を提示するときは、なるべく2つから選んでもらう。せいぜい3つ。 小学校4年生でも理解できるような、わかりやすい説明を心がけている。
その上で 「現状維持」 の選択肢もありですよと付け加える。ただし、必ず定期的な歯科健診を受けてくださいという条件付きで。 歯科の二大疾患(虫歯、歯周病)は、セルフケアや生活習慣、プロケアにより進行速度が大きく変わり(概ね)命には関わらないから取れる方法だ(と思う)。
患者に「エビデンスに基づいた正しい(と思われる)選択」をしてもらうには、早い段階で患者の社会的に置かれた状態や価値観を聞き取り、どのようなところで迷う(と思われる)のかをあらかじめ把握しておくしかない
幸い、虫歯や歯周病は概ねゆっくり進んでいくので、定期健診に来ていればそれが可能
最終的には歯科医師、歯科衛生士の価値観を押し付けず、患者の(医療者側から見た)愚行権を認める…くらいが落とし所なのかな。