かみあわせと全身の健康についてのワコ歯科・矯正歯科クリニックの見解
JR南武線平間駅徒歩1分。ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
かみあわせと全身の健康についてのワコ歯科・矯正歯科クリニックの見解
※下記の事柄は歯科医師である長崎祥吾の個人的な見解であり、特定の歯科医師やグループを否定したり、肩入れしたりする意図はありません。
Twitterで「噛み合わせでパニック障害が治るというサイトを見たのだけど、本当かしら?」と、当該サイトのURLを提示した上で質問がありました。
初耳です。
パニック障害については、専門家ではないのでなんとも言えませんが、
・かみ合わせが悪くてイライラすることは確かにある。
・かみ合わせを直すとイライラが治まる。
ここまでは正しいと思いますが、
・だから、かみ合わせを直すとパニック障害が治る。
というのは、論理の飛躍だと思います。
まあ、麻酔薬のように「効く理由はよくわかってないのだけど、とにかく効くし、便利だから使おう」というものもありますが、本当にかみ合わせでパニック障害が治るのであれば、学会誌に症例報告を出すべきケースでしょう。
☆
パニック障害にかぎらず、
・かみ合わせで~が治る。
というのは、ネットやアレコレ書籍を見ているとよく聞く文言ですし、歯科医師の中でもこのように強く主張する先生もいらっしゃいます。
私も自分の腰痛がなんとかかみ合わせでなおらないもんかと、かみ合わせと全身の健康についてアレコレ調べたり、マウスピースを作ってアレコレ調整してみたりしました。
かみ合わせが悪い、気になると訴える患者さんの対応もアレコレ行ってきました。
その上での結論は
・かみ合わせが心身に影響を与えることは間違いないが「心身の異常は全てかみ合わせから来ている」と言う事はできない。
・心身の異常は、様々な原因が考えられる。かみ合わせはその「原因の一つ」ではあるが「全ての原因」ではない。
というものです。理由は色々ありますが、列挙していくと次のような感じです。
・かみ合わせは、髪の毛一本分の太さ(25ミクロン)でも、違和感を感じたり、肩や腰が痛くなる事もある。
・その一方で、かみ合わせがガタガタなのに、ケロリとしている患者さんもいる。
・かみ合わせの理論は、概ね歯科界で「良いとされるコンセンサス(概ねの同意)」が得られているものから、それほどでもないものまで幅があり、どの理論にしても「完璧なかみ合わせ」の人はゼロに近い。誰しも、なんらかのかみ合わせの「異常(それぞれの理論において)」は持っている。
・それぞれの理論において「かみ合わせの異常度合い」の大きさと、患者さんが感じている違和感や症状は、必ずしも比例しない。
・ほぼ問題ない(ように見える)かみ合わせでも、異常を訴える患者さんもいれば、ガタガタのかみ合わせでも、なんにも困ってない患者さんもいる。
・心身の不調は、時間の経過によって自然に治ることもある。かみ合わせの治療には時間がかかる。つまり「時間の経過によって自然に治った」ことと「かみ合わせの治療によって治った」ことの区別が非常に難しい。
・矯正やかぶせものの作成において、なるべく「理想とされるかみ合わせ」に近づけることは大事だが、歯やかぶせものは使っているうちに動くし、すり減る。生体は、歯のすり減り、動きによる変化をある程度まで許容する。どこまで理想を追求するかは、患者さんと歯科医師の話し合いによって決めるべきだが、理想を追求するあまり患者さんの肉体的、精神的、金銭的な負担を無視するのはよろしくない。
他にもありますが、まあこの辺で。
私自身は、心身のアレコレをかみ合わせの治療によって治す事はあまり期待できないと思っていますし、患者さんにもそうお話しています。
相談を受けた場合は、次のように説明しています。
・治療前に「かみ合わせの治療によって心身のアレコレがかならず治るわけではないですよ。」という事を患者さんに理解して頂く必要がある。「それでもいいから、やってくれ!」というのであれば、断ることは難しいが、治るという保証はできないし、前よりも悪くなることもあることを了解して頂いた上での治療となる。
・心身のアレコレは、歯だけでなく他の原因によっても起こりうる。かぶせものや矯正によって歯の状態を変化させると、うまくいけばいいけど、うまく行かなかった時に元に戻せない。
・患者さんが求める「自分の心身の理想の状態」が、歯科医師の実力を超えているようであれば、手を付けることはできかねる。
まあ「やりませんよ」と言っているに等しいですね…
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私がかぶせものや矯正によってできることは
・痛みをなくす。
・ご飯をストレスなく食べれるようにする。
・見た目を整える。
・虫歯や歯周病のリスクを減らす。
この辺りです。
心身の不調をかみ合わせによって治すのが可能か?という質問に対しては
「できることもあるが、必ずとまでは言えない」
「できる先生もいるが、私には難しかったので断念した」
という返答になります。
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現在、私がかみ合わせについてワコ歯科・矯正歯科クリニックでやっていることは
・なるべく前歯では噛み切り、奥歯ではすりつぶしができるように(希望される方には)矯正治療を行う。
・3本以上のかぶせもの、ブリッジ等を作る場合は、必要であればフェイスボウトランスファー(上顎と顎の関節の三次元的な位置関係を記録する装置)を使い、顎関節の動きにストレスをなるべく与えないようなかぶせもの、ブリッジを作る。
というくらいです。