ミニマルインターベンションの意味とは?(2015-1006)
JR南武線平間駅徒歩1分。ワコ歯科・矯正歯科クリニックの長崎です。
ミニマルインターベンションの意味とは?(2015-1006)
ミニマルインターベンションという用語があります。
「最小限の侵襲=なるべく小さく削り、小さく詰める」と解釈されている場合が多いのですが、実際の言わんとしているところはかなり異なるのではないか、と思います。
2002年、ウィーンにおいて採択された
Minimal Intervention in the Management of Dental Caries
によれば
1.口腔内細菌叢の改善
2.患者教育
3.エナメル質および象牙質のう蝕で、まだう窩を形成していないう蝕の再石灰化。
4.う窩を形成したう蝕への最小限の侵襲。
5.欠陥のある修復物の補修
というものです。
私は、この5つを次のように捉えています。
1.口腔内細菌叢の改善
虫歯の原因はお口の中のプラーク(細菌)なんだけど、歯ブラシだけでは歯と歯の間とか歯と歯肉の境目とか、歯の溝とか細かいところには絶対届かないよ。
フッ化物応用(塗布、洗口)で虫歯菌が酸を作るのを抑えて、デンタルフロス、歯間ブラシ、音波歯ブラシとかとにかく歯ブラシ以外の道具を患者さんのリスクや状況に応
じて選択して、なるべくお口の中のバイキンを少なく保ち続けようね。
患者さんのセルフケアだけでは限界があるから、時々歯医者さんでお掃除もしようね。
2.患者教育
虫歯はお口の中の細菌による感染症だということを、まず患者さんに理解してもらおうね。
その為に、唾液検査で虫歯菌の数、唾液の量、質を調べたり、位相差顕微鏡でお口の中のバイキンを見てもらったり、染め出しをして「自分のお口の中がどーゆう状況なの
か」をまず知ってもらおうね。
単に「磨かないと虫歯になります」だけだと、まず患者さんは実行してくれないからね。
3.エナメル質および象牙質のう蝕で、まだ齲窩を形成していないう蝕の再石灰化。
穴が開いていない、あるいはごくごく小さなザラザラの段階の虫歯は、フッ化物応用(塗布、洗口)やプラークコントロールによって再石灰化(虫歯にカルシウムがペタペ
タくっついて修復される、あるいはそれ以上進行しなくなる、進行がすごーくゆっくりになる)するから、いきなり削るのはダメよ。
再石灰化を諸々試したうえで、どーしても進んでしまった(穴が大きく空いたり、しみる、痛い等の症状がでること)ら、その時はまあ仕方ないけどね。
4.齲窩を形成したう蝕への最小限の侵襲。
昔は材料や道具や虫歯の成り立ちが今とは違ったから、大きめに削って大きめに詰めるというのが良しとされていたけど、今は違うかんね。
歯によくくっつく材料や、精度の良い材料、良い道具があるから、小さく削って小さく詰めることができるよ。
ただし、小さく削ることにこだわるあまり、虫歯を取り残したり詰め物に段差とかできたらダメよ。
大きく削ったほうが見やすいし、ミスも少なくなるんだけど、そのあたり、自分の技術と相談しながらやってね。
5.欠陥のある修復物の補修
詰め物やかぶせものに段差やスキマがあれば、プラークが溜まりやすくて虫歯の原因になるから、なんとかしてね。
でも、全部外してやり直すのはやりすぎだよ。
目で見たり、レントゲンを撮ったりして、段差やスキマの中に虫歯が進んでなくて、表面だけの段差やスキマであれば、段差を磨いたり、スキマにプラスチックやフッ素入
りのセメントを詰めて段差を無くせばそれでいいんじゃないかな。
一言で言うなら、ミニマルインターベンションとは「小さく削って小さく詰める、技法」ではなく「歯を削らないための指針」である、と思います。