第一回 健口教室 Q&A 一覧
衛生士の守です。
前回の投稿に引き続き、お越し頂いた皆様からの質問を一覧としてご紹介します。
(回答は、長崎院長がしています。)
回答者の長崎です。
以下の回答ですが、歯科医療に関しては様々な意見があり、おおよそ正しいと結論がでていることや、現在でも確定した結論がない事柄もあります。
あくまでも、長崎個人の意見であり、異なる意見も存在することを踏まえた上で読んで頂けると幸いです。
Q. 最近、唾液の量が減少して喉が痛いので飴を舐めていますが、これもキシリトールにすべきですか?シュガーレスキャンディとの違いはありますか?
A. 喉が痛くて、さぞ辛いことと思います。年を取ると、肌にシワができたりするように、体の機能は徐々に衰えてきます。
唾液の量が減るのも老化のひとつです。
もちろん砂糖の入ったアメは、歯にはよくありません。
虫歯予防という点から見れば、キシリトール入りのアメに切り替えたほうが望ましいでしょう。
シュガーレスキャンディとの違いですが
キシリトール:虫歯菌を弱らせて、積極的に虫歯を防ぐ。
シュガーレスキャンディ:キシリトール以外の人工甘味料が入っているので、虫歯の原因にはなりませんが、キシリトールと違う点は「虫歯菌を弱らせるわけではない」ので、予防効果としてはキシリトールよりも劣ります。
ただ、人は歯だけのために生きているわけではないので、好きな味を楽しむことはして構わないと思います。
アメを一日に3コ食べているなら、1個はキシリトールのアメに変えるとか、時々お茶や水を飲んでお口の中を洗うと、虫歯になるリスクを下げることができます。
また、普段のお食事を「好きなものを、味わって美味しく頂く」ことでも、唾液の量を増やすことができます。
好きなもの、美味しいものをよく味わって食べると、よく噛んで唾液がでます。
もちろん10代、20代の時の唾液量よりは減ってはいるでしょうが、毎日歩くことで足腰の衰えをゆっくりにすることが出来るように、味わって食べると結果的によく噛むことになり、味と噛むこと自体の刺激によって唾液の分泌が促進されるからです。
Q. 10時や3時(15時)のおやつの時間に砂糖を含んだお菓子を食べるのは良くないことですか?
A. 甘いお菓子が好きなのですね。私も好きです。
良いか悪いかで言えば、歯には良くないです。
ただ、好きなモノを食べて人生を楽しむことも人間には必要ですし、一度に多くの食事を取れないお子様やお年寄りの方には、食事と食事の間のエネルギー補給という意味でもお菓子は必要でしょう。
また、砂糖は確かに虫歯の要因のひとつですが「摂取量」よりも「摂取頻度」の方が問題です。
10時、3時に食べるのであれば、時間を決めてダラダラ食べないようにしてください。食べた後にお茶を飲むのも、お口の中を洗う効果があるので良いでしょう。
加えて、ハブラシだけでなく音波歯ブラシ、歯間ブラシ、フロス、フッ化物うがい、フッ化物入り歯磨き等をストレスにならない程度、自身が受け入れられる範囲で実行し、虫歯のリスクを下げるようにすると更に良いでしょう。
Q. 知り合いのフィンランド人は、歯を磨かないけどむし歯が無いのですがどうしてですか?
A. それは素晴らしいですね。そのような方ばかりだったら私達歯科医師、歯科衛生士の仕事は楽になります。(失業するかもしれませんが・・・)
その方が実際にどのような食生活、ご自身での歯のお掃除、歯科医院での定期健診+歯のお掃除をされているかわかりませんが、人口の5%程度はお口の中に虫歯菌が存在せず、歯を磨かなくても虫歯にならないというデータがあります。
もしかしたら、その方はお口の中に虫歯菌が存在しない、5%の選ばれた人なのかもしれません。
個人的には、虫歯菌がおらず虫歯がなくても、歯周病にはなるので歯を磨いたほうが良いとは思いますが。
Q. 糖分の入った飲み物は、食事を食べて歯が汚れたのと同じ事ですか?
A. ジュースがお好きなんですね。私も好きです。コーラも好きです。
答えですが、その通りです。
虫歯のリスクは、飲食の回数と比例します。食事でも、ジュースを飲むことでも、お口の中に虫歯菌の栄養となる砂糖、炭水化物が入るという意味では同じです。
虫歯の経験が多い人(治療経験が多い人)や、虫歯のリスクが高いと言われている方は、ジュースをお茶に変えたり、フッ化物うがい等虫歯リスクを下げる事を生活に組み込むといいでしょう。
Q. 食後、何分後に歯を磨くべきですか?
A. 晩御飯のあとは、眠くなってそのまま布団に潜り込みたいですよね。私もそうです。
答えとしては30分後が最も望ましいです。
以前は、歯磨きを忘れないように!という目的で食後3分以内とされていましたが、現在では食後は30分は開けるべしとなっています。
理由ですが、ご飯を食べるとお口の中の虫歯菌の働きにより、お口の中が酸性になり歯の表面が溶けます。唾液の酸を中和する力(緩衝能といいます)により、酸性から弱アルカリ性に戻り、溶けた歯の表面にも唾液中のカルシウム、リンがくっついて修復されるのですが、それに30分ほど時間がかかることが理由です。
ただ、外回りの仕事の方や、諸々の事情ですぐ歯磨きをしなければならない、あるいはどーしても歯磨きまでの時間が長くなる方は、早めに磨いて頂いても構いません。完璧を求めて精神的なストレスを受けたり、めんどくせえ!と何もやらないよりははるかにマシです。
Q. 歯間ブラシを1日1回しているのですが、毎食後にした方がいいですか?
A. 理論的には「はい、1日1回で十分です」が、実際には「なるべく毎食後行ってください」という答えになります。
歯間ブラシを使ってもらうのは、歯と歯の間のプラーク(虫歯、歯周病等の菌)を取り除き、虫歯と歯周病を予防してもらうためですが、プラークが本格的に虫歯、歯周病の面で悪さをしだすのはプラークが溜まってから24時間以降と言われています。
つまり、理屈で言えば完璧にプラーク(虫歯、歯周病等の菌)を取り除くことが出来れば、歯の掃除は24時間に一度で十分ということです。
しかしながら、殆どの人はハブラシ、音波歯ブラシ、フロス、そして歯間ブラシを活用しても、完璧にプラークを落としきることはできません。
一度で完璧にできないのであれば、回数で補うのが現実的な対処法でしょう。
Q. 野生の動物は歯石を取らないけど、人間は歯石を取る必要がありますか?
A. あります。
歯石自体には毒性はないのですが、歯石の表面はザラザラしていてプラーク(虫歯菌 歯周病菌)がつきやすいので、虫歯や歯周病のリスクを高めます。
(野生動物は砂糖、炭水化物を殆ど取らないので、虫歯のリスクはありませんが)
「歯周病で困っている野生動物はいない」という意見もありますが、野生動物は歯周病で歯がだめになる前に、餓死したり、病気で死ぬからです。
歯の寿命よりも命自体の寿命が早く来るのであれば、歯のケアをあまり考えなくてもいい、ということです。
ただ、ペットの場合は栄養状態がよく、病気も獣医さんが結構治してくれるので、最近はかなり長生きです。
その為に、歯周病で歯を失うペットも最近は増えています。多くの獣医さんでは、ペットの健康のために歯石除去を行っています。
Q. 妊娠した時に、親知らずを抜く事を勧められました。親知らずは、抜いた方がいいのですか?
A. 現代人では、殆どの人が「その通りです」という答えになります。
歯の数は、上下で合わせて28本あるのですが、ほとんどの現代人の顎の骨は、それ以上の歯を受け入れるだけの大きさがありません。
親知らずは上下左右で合計4本ありますが、ほとんどの現代人の親知らずは顎の骨の中に埋もれていたり、横を向いたりしています。
骨の中に完全に埋まっていれば、虫歯にも歯周病にもならないのですが、ちょっとだけ歯がでていると、出た部分が虫歯になったり、汚れがたまって歯肉が痛くなります。
そのような理由で、原則としては親知らずは抜いた方が望ましいのですが、親知らずを抜くとなると多くの場合痛み、腫れを伴いますので「そこまでは、ちょっと、ねえ」という方にはご自身での歯ブラシではなく音波ブラシを用いたお掃除により歯肉の痛みを予防することと、フッ素うがい、キシリトール等で虫歯を予防することをお話して、どーするかを選択してもらうようにしています。
Q.抜歯後に縫ったのは、何故ですか?(抜歯後は、縫うのですか?)
A.歯を抜いた後の穴(抜歯窩といいます)に汚れが入りやすそうな時や、歯を抜く際に歯肉を切って骨から剥がした場合などは縫うことがあります。
目的は、汚れが入るのをなるべく防ぐことと、切った歯肉が骨にちゃんと元通りくっつくことの2つです。
歯肉を切らず、歯を抜いただけの場合なら殆どの場合は縫わなくても平気です。
Q. 歯周病で歯がグラグラしており、硬いものを噛むと歯に痛みがありますが、硬い食べ物が好きで噛んでしまいます。問題が無いか不安です。
A. 問題があるかないかで言えば、痛みは体が発している「おーい、ヤバイよー」というメッセージなので、痛みがあるのに噛むのは問題がありますね。
ただ「硬いものを噛むと歯に痛みがありますが、硬い食べ物が好きで噛んでしまいます」という質問をされるということは「硬いものが好きだ!なんとかして食べたい!」という強いお気持ちがあるということでしょう。
本当は「ダメだ!」と正論で禁止するべきなのかもしれませんが、人は健康のためだけに生きているのではありません。
たとえ体に悪いとわかっていても、それができないことが辛く苦しいことであれば、逃げ道というか、なんとかする方法を提示するのが専門家の仕事でしょう。
歯科医師として「歯周病で歯がグラグラ、硬いものを噛むと痛い。けど、硬いものを噛みたい」という患者さんがいれば、提示できる選択肢としては
・歯周病を治療する。(歯のお掃除をして、歯周病菌が骨を溶かしている状態を止める)
・強く噛むと痛い歯を少し削り、噛み合わせをゆるめる。
・グラグラの歯を接着剤等で固定し、グラグラしないようにする。
・グラグラの歯を抜き、ブリッジ、入れ歯、インプラント等でしっかりと噛めるようにお口の環境を整える。
といったあたりです。
ただ、どの方法もそれなりの費用、期間、手間、リスクがありますので、患者さんのお口の中の状態や望んでいる事を踏まえて、患者さん自身に「こーゆう治療をやってほしい」と決めて頂くことになります。
Q. 個人に応じたむし歯と歯周病のリスクを調べて、歯科医院で衛生指導をする場合は具体的にどんな話をしてくれるんですか?
A. 個人に応じた話になります。
具体的には、主訴(その人が歯医者に来た理由。今現在最も困っていること)をご自身で解決する方法、あるいは悪化を防ぐ為のお話をさせて頂きます。
主訴の次は、歯科医師の目から見て「今一番ヤバイ、解決しないと!」という点をお話します。
お話するときは、正論で「あれもダメ、これもダメ」「あれをやれ、これをやれ」と言うのではなく、その人の生活習慣、大事にしていること、お仕事等を聞いた上で「なるべくストレスが少なく、精神的、肉体的、金銭的に受け入れられるほどほどのライン」を患者さん自身に考えてもらうようにしています。
Q. 虫歯菌のエサは砂糖や炭水化物ということですが、歯周病菌のエサはなんでしょうか?
A. 歯周病菌と一口に言いますが、容疑者(お前だ!という明確な歯周病菌の種類)は300種類以上もあり、はっきりわかっていないのが実情です。
歯周病菌のエサは、歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝 歯肉溝{しにくこう}とも)からにじみ出てくる歯肉溝滲出液や、血液が主であると言われています。
歯周病菌にエサを与えないためには、歯周ポケットをお掃除する事が必要になりますが、歯周ポケットの深い場所を歯ブラシだけでお掃除することはかなり困難です。
歯ブラシではなく、より効果の高い音波ブラシ、歯と歯の間のプラークを取るデンタルフロス、歯と歯の間や歯肉の下の部分のプラークを取る歯間ブラシを活用するようにしてください。
ただ、どんな道具を使っても歯周ポケットの深さが4ミリ以上になると、自分でお掃除することは不可能と言われていますので、その人の歯周病の進み具合や都合に応じて、1~3ヶ月に一度歯科医院で専門の道具を使ったお掃除を行うのが理想です。
全ての患者さんに、このように説明を行いたいのですが、診療中は諸々の理由から説明を端折らざるを得ない事が多いです。
毎月1度を目安に、患者さん向けの講習会を行い、患者さんの疑問にお答えする時間を設けたいと考えています。
第二回の患者さん向け講習会は、9/6(土)14:00~ ワコ歯科・矯正歯科クリニックで行います。お気軽にご参加ください。