20歳からの歯周病対策 熊谷崇先生著
ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
先日、待合室に「ワコ歯科 デンタル図書館」コーナーを作成しました。
患者さん向けの本ばかりなのですが、中でも非常に面白かった本がありました。
まえがきにとても感銘を受けたので、一部引用します。
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日ごろの生活が病気の原因に大きなかかわりをもつ生活習慣病の場合には、あるていどの知識をもっているといないとでは、病気にかかる危険性や治る可能性が天と地ほどに違ってきます。慢性の病気では、主治医は患者さん本人なのです。
知識がないと損をするぞ、と脅かしておいて水を差すようですが、「もう歯のことが心配で夜も寝られない。どこの歯医者に行っても満足のいく治療をしてもらえず、気がどうにかなりそう」こういう人はあいにくですが、歯の健康の本をもうこれ以上読んではいけません。
健康というのは、気にしすぎるほど遠くへ行ってしまうのです。いじりすぎるとしおれてしまう野に咲く花のようなものです。歯の健康を維持するということは、しつこくこだわるほどのことではなく、振りまわされるほどのことでもありません。
病気の予防なんていうものは、プレッシャーを感じながらするものではありません。そのほうが気持ちいいから、そうする。この方が特だからこうする。そういうものです。
書店の実用書の本だなに並んでいる歯の本というのは、例外なく歯のたいせつさを強調することになっています。歯の本を手に取るぐらいの人ですから、歯のたいせつさは身にしみて知っているのですが、人目をひくためにきわどいことが書かれた本を読んで、ただでさえ悩んでいる人は深刻に落ち込んでしまいます。
「かみ合わせが悪いと長生きできない」
「歯が悪いと全身の病気になる」
「あなたの受けている歯槽膿漏治療はまちがっている」
人を脅かすようなキャッチフレーズがおどっています。根拠のある話もありますが、あえて誤解を生むことをねらったようなものもあります。ほとんど例外的な実例を読んで、自分のことのように心配したり、期待するのはからだに毒です。
(中略)
この本では、特別な歯医者さんや特別な患者さんでなければできない治療法や不確かな治療法、技術的に普及していない新しい治療法に触れることは避けました。科学的な事実については、わかりやすくくわしく書きました。
(中略)
きちんとした情報を患者さんが手に入れれば、あとは患者さん自身で判断し行動するということを、私はたくさんの実例で毎日のように体験しています。ですから、日常の診療でも、その患者さんについてわかっていることをできるだけていねいに、わかりやすく伝えることに時間を割くのです。
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この前書きには感動しました。健康は大事だけど、気にしすぎてはいけない。情報に振り回されるべからずという主張が。
本文も、科学的な根拠のある事柄をわかりやすく説明し、患者さんに対する深い愛情が伝わってきました。患者さんにも、歯医者、衛生士にもおすすめの本です。
私も、熊谷先生の考えをパクって患者さんに向き合いたいと思います。