糖質制限の第一人者の急逝と、沈黙するフードファディスト達 そしてワコ歯科・矯正歯科クリニックの食と健康に対する見解(2016-0216)
糖質制限の第一人者の急逝と、沈黙するフードファディスト達 そしてワコ歯科・矯正歯科クリニックの食と健康に対する見解(2016-0216)
先日、糖質制限ダイエットの第一人者である桐山秀樹さんが急逝され、糖質制限自体の安全性に疑問の声があがっています。
その一方で、~を食べろ、~は食べるな、~を食べるとガンになる、発達障害になる、とにかくアレコレ病気になると不安を煽るフードファディストと呼ばれる人達や、わが社の~を取ればガンにならない、ガンが治る~、とにかくその他いいことづくめという健康食品業界の方々は、殆どが沈黙を守っています。
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有名人の誰それがガンになった、ガンで亡くなる度に
・~を食べていたからだ。
・~を食べなかったからだ。
・わが社の~を飲んでいなかったからだ。
と大騒ぎし、ガンで闘病中と公言している有名人が食事を公開する度に
・こんなものを食べているからガンになったのだ。
・こんなものを食べているとガンが増えて死ぬ。わが社の~を食べれば(あるいは~を食べなければ)(サプリを飲めば)治る!
とまあ、読んでいて腹立たしい限りの、科学的根拠のない勝手なことをネットで書いている人たちが、です。
なぜか考えてみたのですが、多分
・糖質制限と今回の急死は因果関係がないと言い切る→これまで、その食品の摂取量や頻度を無視して「~でガンになる(ならない)」と騒いでいた事と矛盾する
・糖質制限が今回の急死と因果関係があると言い切る→自分たちが進めている極端な食生活も、危険と認識される恐れがある
という理由で「何を言っても自分たちの利益にならない」から、沈黙を守るしかないものと思われます。
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私自身は、今回糖質制限の第一人者が急逝されたことと、おそらく結構徹底した糖質制限をやっていた事との間には「因果関係があるかどうかは『わからない』としか言えない」と考えています。
※発表された死因は心不全という事ですが、人間が死ぬときには必ず心臓が止まるので、明らかな死に至る病気にかかっていたり、事故以外は大体死因は「心不全」になるのです。
では、糖質制限と心不全の間の因果関係のあるなしを推定するには、どーすればいいかというと
A:同年代で心不全で亡くなった方の食生活をさかのぼって調査し、糖質制限をやっていた人とやっていない人にグループ分けする
B:同年代で生きている人をランダムに選び、糖質制限をやっている人とやっていない人でグループ分けする
つまり、
Aグループでは「同年代で糖質制限をやっていて、かつ心不全で亡くなる割合」が導びき出せます。
Bグループでは「同年代で糖質制限をやっている人の割合」が導き出せます。
AとBのグループを比較する事で、糖質制限をやっていると心不全で亡くなる割合は、フツーの食生活をやっていて心不全で亡くなる割合より高いか、同じか、低いかがわかるわけです。
こーゆうのを疫学的調査と言います。
塩分の摂取量と高血圧、心疾患、脳血管障害との因果関係は、このような調査で判明しました。
ただ、この調査は、かなり大規模に行わなければなりません。
調査する人数が少ないと、一人の生死で大きく調査結果が変わってしまう(一人の生死が統計に大きな差を与える)からです。
フードファディストや、健康不安を煽って自社製品を売りつけようとする人たちは、このような疫学的調査を極端に嫌います。
なぜか?
厳密な疫学的調査をされてしまって、主張するような結果が出なかった場合の事を恐れているのでしょう。
主張するのなら、やればいいものを…
誰でも自分の主張、商売にとって都合の悪い事に関しては、沈黙を守る権利はあります。
私も「フロスをしたら銀歯が取れた」というネット上の発言に対しては「そりゃあ、銀歯の下で虫歯が進行していたり、セメントが経年劣化して、取れるべくしてとれたんだよ…フロスは悪くないよ…」と思いつつ、そのような書き込みに対しては概ね黙っています。
「フロスをしなければ、もう少し持ったのではないか?」と聞かれたら「いや、銀歯の下で虫歯が進行していたり、セメントが経年劣化しているのを放置したら、結局はより悪い事になったのだから、取れてくれたのはかえってよかったのだ」と、医学的には正しい(かもしれない)ことでも、患者さんの側からは納得しづらい答えを返すしかないからです。
ただ、フードファディストや健康不安を煽る人たちが、普段は根拠の薄い事柄や、かなりレアケースな事を持ち出して特定の食べ物を貶して自分たちの主張を声高に叫んでいることを踏まえると、今回の件でダンマリを決め込むのは、かなり「かっこ悪い事」だと思います。
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私が自分のクリニックでお話ししている
・歯周病や虫歯の予防、進行抑制にはフロス、歯間ブラシ、音波歯ブラシによるプラークコントロールと、フッ化物による歯の耐酸性の強化+虫歯菌の酸産生能抑制が効きます
という事柄は、多くの疫学的調査により「おおむね確からしい」事が明らかになっています。
だから、自信をもって患者さんにお話ししています。
砂糖に関しては、砂糖の摂取量が日本よりも多い欧米は、概ね日本よりも虫歯が少ないので「ある程度の関係はあるが、セルフケアやフッ化物の使用、歯科医院での定期的なチェック、セルフケア指導があれば、摂取量と虫歯の本数は必ずしもイコールではない」と考えています。
よって、砂糖に関しては「よっぽどでなければ」指導は行っていません。
歯周病に関しては、食べ物との関連ではっきりとしたデータがないので「わからない」と答えています。
他にも「~が効く」「~が悪い(良い)」物はアレコレありますが、効果が疑わしいものに関しては「否定もしないが、勧めもしない」というスタンスです。
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この文章を書くためにアレコレ調べていたら、
『経歴不明だが、医者と紛らわしい肩書を名乗り、有名な医大と類似した名前の研究所の所長をしており、怪しげな健康食品や健康法を推進し、健康関連の番組にもしばしば出演しているている、トンデモで有名なある方』が
・自分は以前から糖質制限は危ないと思っていた
・以前から「糖質制限だけはやめとけ!」と主張していたが、聞き入れられなくて残念だ
・自分の提唱するなんとか栄養学(?)に基づく食事法をしていれば、このような悲劇は防げた
・セミナーや著書などで、なんとか栄養学をさらに普及させねばならぬ!(キリッ
とフェイスブックで主張されていました。
なんというか…すごいメンタルの強さだなと感心しました。
そうでなければ、トンデモ主張で長年食っていくことはできないのでしょう。
一般的な常識から外れた主張が多く、トンデモ界隈ではかなり有名な方なのですが、その方にも商売上の都合もありましょうし「そーゆう商売しかできない人」を晒しあげて収入の道を断つのも気の毒ですので、あえて名指しは避けます。