虫歯は早期発見早期治療?本当に?(院長 長崎)
JR南武線平間駅徒歩30秒、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
虫歯は早期発見早期治療?本当に?の話です。
ワコ歯科・矯正歯科クリニックでは、虫歯であってもすぐに削りません。(痛みがある場合の応急処置は行います)早期発見はやっても、早期治療は否定しています。
理由は単純です。
虫歯は、セルフケアや生活習慣、生まれ持った体質等の虫歯リスクの積み重ねによって発生し、進行します。つまり、それらの虫歯リスクをそのままにして削って詰めるという治療のみを行っても、同じ理由でまた虫歯になってしまうからです。
詰め物、かぶせものの種類が保険であっても自費であっても、歯との間に境目がある以上、天然の歯よりも再度虫歯になるリスクは当然高くなります。
では、虫歯を発見した場合はどうしているか?
まず、お口の中の写真、レントゲンを撮影し、現時点での虫歯の状態を記録します。
次に、唾液検査を行い、虫歯菌の数を調べます。
そして、唾液検査の結果と合わせてプラーク(細菌)の染め出しを行い、現時点での患者さんの虫歯リスクを把握します。リスクに合わせてフッ化物洗口、フロス、歯間ブラシ等の指導も行います。
患者さんには可能な範囲でセルフケアや生活習慣の改善を行ってもらい、その上で3~6ヶ月後に再度口腔内写真、レントゲンを撮影し、虫歯が進行しているかどうかを確認します。
セルフケアや生活習慣の改善等により、虫歯の進行が停止していればそれでよし。小さな範囲であれば極力削らずにそのまま進行抑制と経過観察を行います。
虫歯の穴が大きく、進行が止まったとしてもプラークが溜まりやすい、あるいは凸凹が気になるような場合には、削らずにフッ化物入りのセメントを詰めることもあります。
フッ化物入りセメントの利点は
・虫歯を削らなくても、ある程度歯に接着し、取れにくい。
・取れたとしても、それまでは接触している部分にフッ化物を供給し、虫歯の進行抑制になる。
といった事柄です。
3~6ヶ月後、残念ながら虫歯の進行が停止していなかったり、停止していても穴が大きく、機能や見た目の問題で削って詰める、かぶせる等の治療が必要であれば、その時に初めて削ります。
☆
早期発見が悪いわけではありません。虫歯を小さいうちに発見して、患者さんのセルフケアや生活習慣の改善の指導を行うことは大事です。
しかし、まだ進行抑制が可能な初期や小さい虫歯を「早期治療」で削って詰める、かぶせることは、進行抑制していれば削らずに済むという可能性を潰す「いらんこと」ではないでしょうか?
早期発見「進行抑制」ならまだしも。
また、削って詰めるという治療が必要な状態であったとしても、痛みがないのであれば、まずは虫歯のリスクを把握し、患者さんのセルフケアや生活習慣の改善を指導し、虫歯のリスクを低くしてからでなければ、同じ理由でまた虫歯になってしまうのではないでしょうか?
がんのように「一度なってしまったら、進行抑制が見込めず、致命的な結果につながる」病気であれば「早期発見早期治療」は良いでしょうが、虫歯のように「セルフケアや生活習慣の積み重ねによって始まり、進行する」病気であれば、治療の前にセルフケアや生活習慣の見直しを行い、進行を抑制することが出来るのです。