PMTCに虫歯・歯周病予防効果なし?(院長 長崎)
JR南武線平間駅徒歩30秒、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
PMTCに虫歯・歯周病予防効果なし?
うそーん!…いやいや、歯科衛生士関連の資料では実は結構言われていることです。定期的にPMTC(ラバーカップ等で歯を磨く)を行っても、虫歯・歯周病の予防に効果はなし、としています。
>論文(英語)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19816459
>論文(Google翻訳)
https://translate.google.co.jp/translate?sl=en&tl=ja&js=y&prev=_t&hl=ja&ie=UTF-8&u=https%3A%2F%2Fwww.ncbi.nlm.nih.gov%2Fpubmed%2F19816459&edit-text=&act=url …
正確に言えば「定期的にラバーカップ(歯面研磨用の道具)で歯面を研磨しても、虫歯・歯周病の予防に効果なし」であって、他の道具やペーストを使った場合については触れていません。
これは別の資料ですが「歯面研磨は歯科予防処置においては、治療上重要ではなく、大きな役割も果たしていない」とあります。PMTCを集患の軸としている歯科医院激怒な論文ですね…
>認定歯科衛生士にとってのPMTC
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/51/3/51_3_279/_pdf
しかし、この論文を根拠に「歯科医院での歯のお掃除は無駄!」とはなりません。 フロスその他の道具でコンタクト(歯の接触部位)や歯肉縁下(歯周ポケットの中)をお掃除については触れてないからです。
幾つかの報告はありますが、私は歯科医院でのお掃除でも「フロスやその他の道具で歯肉縁下プラークの除去+フッ化物入りペーストを使う事」で、ある程度虫歯・歯周病の予防効果はあると考えています。
「患者さんでも届くような、歯の表面を磨いただけじゃダメ」ということで、歯の接触部位や歯肉縁下のような、患者さん自身でのセルフケアで届かない部位のプラーク除去+フッ化物活用が重要ということです
虫歯、歯周病のリスクの少ない平滑面(歯の平らな部分)を磨くだけで虫歯・歯周病の予防効果があると盛ったらダメよ、という意味を込めた論文でしょう。歯科医院にとって「不都合な真実」かもですが…
私は以上の事を馬鹿正直に患者さんに説明した上で「それでも、定期的に歯科健診を受け、その際に歯のお掃除をする事は虫歯・歯周病のリスクを減らします」と説明しています。 PMTCに予防効果なしという論文と矛盾する?いや、しないのです。
歯科医院で歯のお掃除を受ける事で、自分自身では届かない箇所までお掃除してもらいます。ソレは感触でわかります。また、終わった後の爽快感で「自分のセルフケアは不十分だった!フロスとか頑張らなきゃ!」という、セルフケアのやる気を出す効果です。
加えて、歯のお掃除を受ける際に歯科医師、歯科衛生士からお口の状態の説明を受け、セルフケアや生活習慣の指導を受けます。それにより、セルフケアや生活習慣の改善されます。 お掃除自体の効果よりも、セルフケアのやる気が出る効果の方がメインです。
まとめると「PMTC(歯科医院での歯のお掃除)自体に虫歯・歯周病の予防効果はない」が「爽快感と指導により、セルフケアや生活習慣の改善が期待できる」事により、予防効果はあるとも言えます。
また「PMTC(歯科医院での歯のお掃除)自体に虫歯・歯周病の予防効果はない」のですが「お掃除の部位やフッ化物の活用等、やり方次第ではある程度予防効果を発揮する事も可能」だと思います。
論文のセンセーショナルな部分だけ鵜呑みにするのではなく「この論文は何を言わんとしているのか?」を汲み取り、自分の臨床に有益な情報を得るかを考えながら読むと、より楽しいです。