治療の順番について(2014-0922)
南武線平間駅徒歩1分、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
治療の順番についての話です。
患者さんは、60代女性です。
歯肉が痛いことが理由で来院されました。
全体的に歯周病が進んでいますし、かぶせものと歯の間に虫歯がある部分もあります。
おそらく、歯と歯肉の境目には歯石もついているでしょう。
こーゆう「問題点がたくさんある」人の場合は、どこから治療を進めるべきか、また、どこまで完璧を求めるかということを考えてみます。
患者さんは「歯肉が痛い」ことが理由で来院されたのですから、まずその痛みをどーにかしてあげないといけません。
歯肉が痛い理由は、プラーク(バイキン)コントロールがうまくいかず、歯と歯の間、歯と歯肉の境目がプラークによって炎症を起こしているからです。
炎症が起こることにより、骨も溶け、歯周病となっています。
染めだしをしたところ、予想通り歯と歯の間、歯と歯肉の間に大量のプラークがついていました。
本日は、この染めだしを見てもらい、その後歯間ブラシの使い方のビデオを見てもらいました。
「染まっている部分が、プラークといって今回の痛み、また歯周病の原因となるバイキンです。このプラークは、ハブラシだけでは60%くらいしか落とせませんし、特に歯周病、虫歯の原因となる歯と歯の間にはまったく届きません。
歯科医院でお掃除することもできますが、毎日歯科医院でお掃除をするのは非現実的です。今日は、歯間ブラシの使い方を覚えて頂きます」
このように説明し、実際に歯間ブラシを使ってもらい、歯間ブラシについた汚れを見てもらいました。
ご自身で全ての歯と歯の間に歯間ブラシを通してもらい、感想を聞いたところ「こんなにさっぱりしたのは始めて!」と驚いていました。
これまで、歯科医院で歯間ブラシを使うよう指導された経験がなかったということでしょう。
虫歯、歯周病諸々が原因で歯がもげたりしたなら、かぶせものや詰め物でなくなった部分を補う必要はありますが、天然の歯を人工の材料で置き換えた場合、歯と人工物の間のスキマが口の中に増えることは変わりありません。
天然の歯を人工物に置き換えた場合、当然天然の歯よりもその後虫歯、歯周病に対して継ぎ目ができている分弱くなります。それまでハブラシだけしか使わなくて虫歯、歯周病になったのであれば、担当した歯科医師、歯科衛生士はデンタルフロス、歯間ブラシ、フッ化物洗口のような「より効果的なプラークコントロール、虫歯や歯周病の予防方法」を指導する責任がある、と思います。
個人的には、ハブラシの当て方、動かし方を指導するよりも、デンタルフロス、歯間ブラシ、フッ化物洗口を教えた方が効果が高いと考えています。
歯科医師であれば6年間、歯科衛生士であれば3年間、歯の構造を徹底的に学んでいます。そーゆう人達なら歯の構造、生え方を理解しているので、ハブラシの当て方、動かし方を説明された時、スムーズに理解できますが、そーゆう専門的な教育を受けていない普通の患者さんが、チェアサイドでたかだか30分程度ハブラシの当て方、動かし方を完璧にするというのは、かなり難しいことではないでしょうか?
デンタルフロス、歯間ブラシ、フッ化物洗口であれば、確かに使いこなすのに多少の指導は必要ですが「厳密に正しいやり方はどうあれ、とにかくやらないよりはやったほうが間違いなく虫歯、歯周病の予防になる。ハブラシの使い方を完璧にするよりも早く、確実に結果が出る」ので、ハブラシの正しい使い方よりも先に、デンタルフロス、歯間ブラシ、フッ化物洗口をお話しています。
この患者さんは、いずれは虫歯治療、かぶせもののやり直しをする必要があります。場合によっては、入れ歯やインプラントも必要でしょう。
ただ、虫歯、歯周病は「プラークコントロール、その他の生活習慣、体質等の『原因』」を積み重ねた「結果」です。
原因を改善することなしに、結果だけを見て「歯科医師、衛生士による虫歯、歯周病の治療」にいきなりとりかかるのは、家事で家が燃えているのに、火を消さずに家を修理しようとするようなものです。
この患者さんの場合、まず原因であるプラークコントロールが患者さん自身でできるようになること、これがスタートです。
勿論、痛い所があれば痛みを治めるための応急処置は必要ですが・・・。